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猫武者

久しぶりで訪ねてくれたSさん。
普段は無口な人で、考え方も行動も潔癖症ぎみ、
少年のようなダンディズム溢れる好々おじさんだと、
娘の評。
お酒が好きで、飲むと重たい口も多少滑らかになる。

先日は、子供の頃飼っていた猫の話で、
私達を笑わせ、シンミリさせてくれた。

三毛のその猫は、そんじょそこらのヤツらとは
体格からして違っていたという。

ひょっとしたら祖先は、ヤマネコであったかもしれぬ。
狩りがうまくて、飛び立とうとする鳥をも仕留める。
獲物は必ず、主人であるSさんのもとへ届けられた。

ある日、ブギャー ブギャーと、激しく鳴く豚の声がした。
あわてて外へ出ると、あろうことか、
三毛が豚の背に乗り、噛み付いていたのだという。

あわれ豚君は、悪魔のような“野生ネコ”を振り落とそうと、
その辺を走り回り、挙句の果てに
町中まで突進したそうな。

大きすぎる獲物に振り落とされまいと、
爪を立て、牙をむき、すさまじい形相だったに違いない。

あまりのことに家内中が、
「三毛をどこかへ捨ててしまおう、
アイツならどこででも生きてゆけるだろう」
ということになった。

Sさんは三毛を遠くまで連れて行き、放してやった。
寄り道をして家に着くと、
三毛の方が先に帰っていた。

しばらくして、三毛はフッといなくなったらしい。
「嫌われてると思ったンでしょうかねェ」
とSさん。
「きっと死期が近づいていたンですヨ。
死んだ姿を晒したくなかったンでしょう」

私達は豚の背に乗るネコのあたりで、さんざん笑ったが、
最後は妙にシンミリした。
野武士のような三毛に、
敬意に近いものを感じたのかもしれない。

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玉麗

  • Author:玉麗
  • 大阪在住の水墨画家。
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