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新緑の頃に

花水木橋のあたりからS字カーブを出るまで、
この辺一帯に、ハナミズキが咲く。

上の方の階から見渡すと、白とピンクが淡く混じりあっている。
その間に、黄緑が程よく配色されて、
この季節の麗しさは、何に例えればよいだろう。
窓を開け放つと、緑の香しさが部屋の中に広がって行く気がする。


「髪を切ります。緑萌える、心痛む日・・・」
と書き入れた絵が、私の本の中にある。

女が髪を切るのは、失恋した時とか、
その昔言われたものだが、私の場合そうではない。
何故だったかは、思い出せない。
しかし、緑萌える美しい季節に、心痛むことがあれば、
どんなにかつらいことであったろう。


行く末を何に委せて斯かる日の
1日(ひとひ)を耐へん
命さえ 惜しからなくに

裏山の林に入ればものの葉に
あられ降りける
はらはらと霰降りける


その頃、佐藤春夫のこの歌に出会い、書にしたためた。
詩人の哀しみは、私の心にも染み入るように伝わって、
書いている和紙の上にポタポタ、
涙が音をたてて落ちたことを覚えている。

ハナミズキの咲く頃、思いはめぐる。
私の日々はまだ、駆け去るように過ぎて行くが、
もう迷うことはないだろう。
それに、髪を切ろうにもこの頭では、どうにもならぬ。
プロフィール

玉麗

  • Author:玉麗
  • 大阪在住の水墨画家。
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