明智光秀を主人公にした小説が、我が家に回ってきた。
織田信長を討ち、3日天下を取った人と俗に言われる。
信長側(あるいは秀吉)から、書かれた本が多い中、「物語」であるとは認めながらも
けっこう新鮮で、ふーん、なるほどと上・下巻一気に読んでしまった。
光秀は死なず、徳川家康の知恵袋天海僧正として生き残ったとの結末は、
思わずニンマリさせられる。
光秀の娘、玉子は細川家に嫁して後、切支丹信徒ガラシャと呼ばれ、
非業の最期を遂げるはずだが、彼女も又、火焔の中から救われ、
一代を全うしたということになっている。
悲劇の女性への憐憫だけではないだろう。
物語を構成する柱のひとつとして、
玉子姫と光秀が率いる忍者の1人、小平太との恋を密かに進めてゆくあたり、
計算された読者へのサービスが感じられる。
著者の経歴を見ると、やはりと思った。
1996年吉川英治文学新人賞を取った「ホワイトアウト」。
あの本もおもしろかった。
歴史上の人物を小説にするのは、易しいようで難しい事だろう。
先達が描いた像をなぞるだけではおもしろくない。
かといってあまりにも変えては、歴史そのものが狂う。
私達の絵にも歴史がある。
椿の描き方、蘭の描法、それらすべてに画家達が苦労した足跡が感じられる。
その描法を習得しつつ、さらに独自のものを創り上げる。
明智光秀の家紋は水色の桔梗。
桔梗にも一目でソレとわかる描き方がある。