8月31日の真夜中に何かがグワラと変わり、9月1日になる訳ではないのに、
朝目覚めると、陽の光に黄金色を感じる。
そして、夏はもう終わったンだと、心の中で呟く。
今日も明日も、まだ当分は暑い暑いと言いながら暮らすので、
せめて、感性の中だけでも秋を迎えたいと願うのは、
日本人だけなのだろうか。
秋といえば、こんな都会の中でも、
赤トンボが群れを成して飛んでいるのを見ることがある。
わが家のベランダの小さなガラス器に住むヤゴ。
彼?も旅立ちの時を迎えようとしているのか、
ちょっと前から、大好物のアオムシを与えても食べようとしない。
羽化する時には這い上がれるように、小さな板きれを入れてやると、
その裏側に隠れてじっとしている。
顔はいつの間にかトンボの体を成している。
私達は日に何度も様子を見ては、「その時」を心待ちにしている。
去年は糸トンボが5匹ほど巣立って行った。
今年のヤゴは大きいし、体の一部が少し朱を帯びているから、
赤トンボに違いない。
あと何日、わが家を棲み家にするのだろう。
何も食べようとしないのは、飛び立つときに少しでも体を軽くするためだと、
ヤゴの話をするたびに解説している。
赤トンボになる日、きっと空は澄み渡り、ほんの少し涼風も吹いているだろう。
その風に乗って、羽ばたき、川の方向へ飛び去る日が近づいている。
ちょっと寂しくなるだろうナ。
そうだ、今年はクリーム色のまんじゅしゃげが、ひょっとして咲くかもしれない。
何かを待つのはうれしいことだ。
季節は少しずつ移って行く。