その昔、日照りが続き田畑の水が枯れると、人々は天に祈った。
神の使い龍が、恵みの雨を降らせてくれますようにと。
現代の人々は、祈りが届くなどと非科学的なことは
子供でも考えはしないだろう。
しかし、日々の天候の前に為す術は、今もって無いに等しい。
長雨、嵐、気温の上昇…
どれひとつ取っても、自然の為すがままを受け入れるしかない。
温暖化においては、人為だとわかりつつも、
止める有効な手立てを実行出来ないまま。
ところで今日は、40パーセントの確立という予報が当たり、大雨となった。
大空に稲妻が走り、雷鳴は地の果てまで轟き渡るがごとく
凄まじかった。
「龍が恵みの雨を呼んでくれることを、ひたすら祈っております」
円光寺からの暑中見舞いの返事に、私はこう添えた。
あのハガキは今日届いたはず。
「風太、龍だ!龍が来たんだ!!」
バリバリバリーッと鳴るたびに私にしがみつく?ワンコ。
そのワンコを抱いて、あっちの部屋こっちの部屋と走り回り、
扉や窓を開け放つ。
ウワーッ もっと降れ!もっと降れ!!
これは、かの龍が地上近くまでやって来て、
しぶきと共に大暴れしている様だと、私は思いたい。
焼けつくような大地が、これで少しは冷めるだろう。
龍への祈りが届いたと、喜んでいる目出度いヒトが
1人ぐらいいてもいいじゃないか。