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四季の姫のストーリー⑲


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この物語は、澁谷玉麗の完全オリジナルです。
毎週日曜日に更新します。

過去のストーリーを読みたい方は、
ブログの右側の「カテゴリ」の中より、
「四季の姫のストーリー」をご覧下さい。

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(登場人物)

四季神家:父神 愛馬「豊雲(とよくも)」
     母神
     一の姫(冬) 供・・・白狐「冬衣(ふゆぎぬ」
     二の姫(春) 供・・・駿馬「建速(たけはや)」
     三の姫(秋) 供・・・鳳凰
     末の姫(夏) 供・・・龍「倭(やまと)」
     
四季神家に仕える者:
     ぼたん老女
     ふたりさくら子
     加牟豆(かむず)

     冬の社の主神
     少名神(すくながみ)・・・(冬の社の主神の従兄弟)
DSCF3339.jpg
(シモクレン)


夏の空はくっきりと晴れて、
もう100日も雨が降っていない。

下界では射られるような陽の光に焼かれ、
万物がジリジリと干上がっていった。

もうこれ以上日照りが続いては、作物が穫れないであろうと
人間達は恨めしそうに、天空を仰ぐ日々が続いた。




その頃、四季神家では、まだ幼い夏姫が龍の倭を相手に、
加牟豆が新たに供に加わったことを伝えていた。


「倭、よいか わたしの言うことをようく聞くのだ
加牟豆も供になった
加牟豆は飛べないから、おまえの背に乗せてやっておくれ
決して振り落としてはいけないよ」


倭の金色の目がギロリと光り、加牟豆を睨んだ。

それだけで加牟豆の心臓は、早鐘(はやがね)のように鳴り、
その場に立ちすくんでしまった。



その時。


「倭、姫を乗せて急遽人間界に赴き、雨を降らせよ!」

父神から命令が下った。



「行って参ります 加牟豆、行くぞ!!」


末の姫の小さな体が龍の背に登った。

慌てて駆け上がろうとする加牟豆の体に
倭の長い髯がヒュルヒュルと伸びた。

加牟豆は又しても空中に投げ出されるかと、
目をつぶった。


次の瞬間。


龍の体は、地表を離れ、
姫と加牟豆を乗せて、高い空の上にあった。


そして急降下すると、厚い雲を抜けて下界へと向かって行った。



龍は人間界へ達すると大きく口を開き、
身をくねらせて火炎を吐いた。

炎はたちまち雷(いかづち)となり、稲妻が走る。
身をつんざく雷鳴と共に、雨粒が飛沫となって、地表と叩いた。



ひとときの後、
緑はつやつや蘇り、涼やかな一陣の風邪と共に
龍は四季神家へと帰って行った。

DSCF3340.jpg
(アカメガシ

そののち、五風十雨(ごふうじゅうう)が続き、
やがて秋の気配がそこかしこに漂ってきた。


夏姫に替わって、
秋姫が、綾織(あやおり)と名付けられた鳳凰と共に
空を舞う日がやってきたのだ。


母神はこの年、秋姫のために綿の羽織ものを拵(こしらえ)えた。
それは、ぼたん老女とふたりさくら子を伴い、
織屋にて100日で織り上げた、秋の山々を写した柄であった。


母神は秋姫にその羽織ものを着せかけながら、言った。

「山や里の草木を染めた後は、湖の上に行き
惜しげなくこの衣を投げてやるのですよ」


(by 玉麗)



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(サクラ)



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  • 大阪在住の水墨画家。
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