教室で、今年最後の日になると、誰からともなく
「どうぞ 良いお年を」と声を掛け合って別れて行く。
一年に一度の挨拶。
日本には美しい習慣、ほっとする言葉の数々があるが、
それらのうちのこれは最たるものであろうと
いつからか感じるようになった。
年を取ると当然若さが減り、元気が失われてゆく。
しかしその分、今まで気付かなかった「珠玉」が見えてくる。
それは遠くで光り輝くものではなく、
身近に、ポッと灯りが点されたような
ささやかなものであったと、ようやく思い至る。
画賛に「明珠在掌」と書く。
まさにこのことであろう。
今年は円光寺で始まり、円光寺で終わった。
何度もめまいを起こし、不調の年ではあった。
しかしこうやってエッセイを綴りながら思い出すと、
一年はアッという間に過ぎていったように思う。
どうやら手本描きも無事終わりそうだし、
ほどほどに良い年であったのだろう。
来年はもう少しだけ、元気になりたい。
今年もあと2日、
皆さん、どうぞ良いお年をお迎え下さい。